「放し飼いにおける利点と注意点」

歩荷農場では、平飼いの中でも屋外へ自由に出入りできる放し飼いにより鶏たちを飼養しています。
なぜなら、放し飼いが食卵を生産する採卵養鶏場として最も健康で安全性の高い卵を生産することができると考えたからです。
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現代養鶏の主流であるアメリカ型ケージ養鶏について今さら多くを語ることはしませんが、鶏たちを狭いカゴの中に閉じ込めて人の利便性、生産効率を最優先することによりたとえ家畜であっても生き物である鶏たちの身体および精神の自由を奪ってきたことは否定できない事実です。
身動きも不自由になる程の空間につめ込められ、同じ場所で餌を食べ糞をして卵を産まさせられることにより鶏たちはどれだけの苦痛とストレスを与えられているのでしょうか?
ストレスを感じている鶏たちが、たとえ危険な病気ではないとしても果たして健康だといえるでしょうか?
人間でも同じことだと思いますが、何らかのストレスによって精神的にとても不安定なソウウツ状態になることは珍しいことではありません。
その原因のほとんどは、ストレスが引き起こすホルモン分泌の異常、バランスの乱れによるものです。
みなさんは、ホルモンバランスが乱れている必ずしも健康とは言えない鶏たちにとても安全な飼料を与えたとしたら、その鶏たちが産む卵を本心から健康で安全性の高い卵だと思うことができますか?
大量生産に適したケージ養鶏卵の魅力は"物価の優等生"と言われたその価格の安さ以外には考えられません。
(特殊栄養卵は飼料に含まれる特殊成分を単に卵に移行させただけのものなので、通常のサプリメントを摂取される方がよほど効果的だと思います…。)
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放し飼いという生活環境、飼養形態は、家畜として人の都合に合わせて育種改良されてきた鶏たちに生き物としての活力を取り戻させ、ホルモンバランスの乱れの原因であるストレスを軽減させるという絶大なる利点を有していると確信し、歩荷農場では開業より現在まで決してブレルことなく実践して来ました。
卵を産んでくれる鶏たちの元気いっぱいでのびのびとした姿とその生気に満ちた強い目力が食の安全を守るために忘れてはならない大事なことを教えてくれると確信しています。
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しかしながら、放し飼いの中でも飼養形態によってはいくつかの注意点が存在します。
鳥インフルエンザなどの危険な伝染病が世界中で流行している現代においては必ず管理できる放し飼いでなくてはなりません。
つまり、扉を空ければ屋外へ自由に出られるというだけの庭先養鶏的なイメージ優先の野放しは自己満足でしかなく決して許されるものであってはならないのです。
他の野鳥と接触できないよう屋外には防鳥ネットを設置し、鶏舎内の清掃や衛生管理にも多大な注意が必要とされます。
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さらに卵は、土の上で産卵させてはなりません。
鶏舎の中に産溜型の巣箱を設置するのも衛生管理上好ましくありません。
なぜなら、土の上で産んだ卵は集め残しの危険性が懸念される上に糞や土が付着し汚れてしまう場合が多いので洗卵しなければならなくなってしまうからです。
産溜型の巣箱の場合も既に産まれた卵がある上に何羽もの鶏が入れ替わり産みに入るため、やはり糞や土が付着したり、重さや衝撃で破卵して全体が汚れてしまい洗卵しなければならないことに加え、夏場温度が高い場合は腐敗して数時間の放置で虫が湧く場合もあるからです。
放し飼いであっても、歩荷農場(上記写真)のように産まれた卵が通路側の網トレーに転がって行くロール式巣箱を導入することで洗卵しなくても汚れのない卵を出荷できるよう徹底した衛生管理を実践していくことが重要であると考えます。
無洗卵についてはこちらから(より詳細な見解は追って掲載していく予定です。)
https://boccalife.exblog.jp/d2016-02-02/

本掲載は歩荷農場の飼養形態および主観であり、物事の善し悪しを論じるものではないことを付け加えます。
by bocca-farm | 2019-05-14 21:48 | 考[養鶏]