「卵と鶏銘柄についての考察 ④」

歩荷農場が採卵鶏農場として、他の銘柄鶏を一切飼養せず、なぜ純国産鶏「もみじ」だけにこだわるのか?今回で結論付けたいと思います。
「卵と鶏銘柄についての考察 ①」
「卵と鶏銘柄についての考察 ②」
「卵と鶏銘柄についての考察 ③」
放し飼いという健康的な飼養方法に適した採卵鶏は、交配雑種の中でも赤玉生産性銘柄であることはこれまで3回にわたり解説して来ました。
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その赤玉生産性銘柄の中で、国内シェア90%以上の「ボリスブラウン(外国産鶏を主体に交配改良した鶏)」と、たった6%のシェアしか有していない純国産鶏「もみじ」、そして純系在来種である「名古屋コーチン」の卵を2006年に歩荷農場で比較調査した結果をもとに考察していきます。
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この検査結果から、
①卵重は「名古屋コーチン」が極端に低いことを除いては、「ボリス」も「もみじ」もほとんど差異がない。
②卵白高及びHU 《濃厚卵白の高さの対数値を卵白の品質と考えたもの。HU=100log(H-1.7W0.37+7.6),H:濃厚卵白高(mm),W:卵重(g)》 は、「ボリス」が有意に高い。
③卵黄色は、卵質を比較する要素としてあまり意味を持たず重要ではないため、ここでは論議の対象として扱わない。
④卵黄重及び卵黄重比は、「もみじ」が有意に高い。(「名古屋コーチン」の卵黄重比が高いのは、卵黄重が低いにもかかわらず卵重が小さすぎるための結果と考え比較対象としては不適であると考える。)
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加えて、卵殻についてH9~H15年に実施された京都及び茨木の畜産試験場の検査から、卵殻強度が「ボリス(3.5kg/㎡)」に比べて「もみじ(3.8)」が有意に優れているという結果が報告されています。(ちなみに、愛知県農業試験場で検査した自然卵歩荷(鶏種もみじ)の卵殻強度は、全て4.0kg/㎡を超えていました。)
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以上の結果から、「名古屋コーチン」のような純系在来種の特殊性は別の論点として、赤玉生産性銘柄においては、通常、産卵日から出荷までに時間を要する一般の養鶏で、多種交配により喧騒性が低く飼養しやすい上に、産卵率が高くHUが有意に優れている「ボリスブラウン」を飼養するのはもっともなこと(黄身が小さいため白身の盛り上がり、プリプリ感が長持ちするため、鮮度の良さをアピールしやすい。)であると思います。
しかしながら、歩荷農場では産卵当日の卵しか販売しないため、HUにより偽りの鮮度を主張する必要性が全くないため、卵本来の優れた特徴を維持したまま直接消費者の方々にその素晴らしさを味わっていただくことが可能となります。
卵黄が大きくて卵黄重比が高くなれば当然HUの低下も早くなりますが、卵黄が有意に大きいことはどう考えても魅力的な特徴であり、さらに卵殻強度が優れているということは細菌に対しての防御力が高いことの証であり、安全性や衛生面での大きな利点と考えることができます。
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「もみじ」は純国産ということもあり、交配系統の絶対数が外国産鶏に比べ格段に低いため、交配雑種であっても純系種に近いことから神経質で飼養しにくい面も多いのが実情ですが、歩荷農場においては、国産主義という概念を除いても交配雑種の中では最も優れた卵を産む銘柄であると判断します。
by bocca-farm | 2016-06-04 23:52 | 鶏銘柄