「卵と鶏銘柄についての考察 ②」

考察①では、現代の採卵養鶏において卵を産むために高度な育種改良を施された雑種(近交系雑種)が最も適しているという理由を端的に解説しましたが、今回はもう少し深く掘り下げてみたいと思います。
現在、販売されている卵の90%以上が雑種のものであるという現実の中、一部では高級卵として烏骨鶏や名古屋コーチンなどの純系在来種を主体とした地鶏系の卵も販売されています。これらの卵がなぜ高級卵として高い価格(100~500円/1個)で販売されているのか?
答えは唯一、産卵個数が少ないからです。産卵個数が少なければ少ないほど希少価値により価格が高くなるのは当然のことであり、それをあたかも凄い卵であるかのように消費者の方々に主張することは、全く筋違いの愚行としか言いようがありません。
なぜなら、どんな鶏種であろうが、飼養方法や飼料の内容、衛生管理の状況によってその卵も全く別ものとなってしまうことは明確な事実だからです。
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そもそも在来種のような純系に近い鶏は、愛玩鶏(ペット)の場合が多く、一代交配させた地鶏などでもほとんどが肉用鶏であり、その一部を採卵鶏とするために近親交配させ卵肉兼用種にしたというのが現実なので、採卵鶏としての能力が極めて低いことは言うまでもありません。
具体的には、
①就巣性が高く産卵率があまりにも低すぎる。(就巣とは、卵を孵化させるため温めようとする行為で、就巣すると卵を産まなくなります。)
②卵重が小さ過ぎる。
③雑種と違い同種の血が濃いため、臆病で精神的に弱い面が強く、すぐに産卵を休止してしまうので平飼いや放し飼いに適していない。(肉として出荷する場合は、産卵する前の時期120~150日なので平飼いにしても問題はありません。初産は名古屋コーチンで約180日ぐらいです。)
④卵殻などの卵質悪化が雑種に比べて格段に早い。つまり、食卵を生産する鶏としては不適という結論に達します。
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鶏の産卵率が高すぎることを飼料などで低くし、ストレスを軽減してやることは可能ですが、初めから低すぎては採卵としての畜産業は成り立ちません。
それにもかかわらず、産卵用に在来種改良を行うのは肉を主体とした販売戦略を有利に展開していくためのブランド構築の一環であり、残念ながら食の安全とは程遠い次元の考えであることは言うまでもないでしょう。
みなさんは、ケージという檻の中で濃厚飼料を食べさせられて育っているブランド地鶏、純系在来種の卵とカロリーを抑えた粗飼料を食べ、屋外を自由にのびのびと駆けまわっている元気な雑種の卵。果たして、どちらを選ばれますか?
by bocca-farm | 2016-05-16 23:05 | 鶏銘柄